Grand remplacement理論

フランス文化の研究をしてるわけではないが、長年フランス語をやっているのでフランスのニュースを読む機会が多い。

次の大統領選挙に、パリ政治学院出身でフィガロのジャーナリストであり、フランスで最も売れてる人気作家の一人でもある、右派のEric Zemmourが立候補すると見られ、注目されている。このような状況下で今再びGrand remplacement理論が注目されているようである。もともとフランスはカトリック系の白人国家なのだが、黒人やアラブ系移民の増加によりカトリック系白人は絶滅するか少数派に追いやられ、フランスがアフリカ系アラブ国家になるという予想である。保守系文筆家Renaud Camusによる理論。

最近のフィガロ紙のアンケート調査によれば、回答したフランス国民(おそらく白人だろう)の7割近くが、この理論に共感を示し、フランス社会の将来に不安に感じているという。去年チェチェン出身のイスラム過激派の若者が、シャルリーのカリカチュアを用いて表現の自由について授業を行なった地歴の教師、サミュエルパティーを殺害した事件も、生々しい記憶となってフランス市民の脳裏に残っているだろう。

外国人である私から見てもGrand remplacement理論は共感できるものである。フランスは労働力不足を補うために長年移民を受け入れてきた歴史があり、今やアメリカ並みの多民族社会になっている。そのせいで多様性やらポリコレやらに迎合しなければ、もはやフランス社会の統一性を維持できなくなってきているのではないだろうか。フランス社会の単一性を維持することはフランスの政治家に課せられた喫緊の課題となっているらしく、実際マクロン大統領は徴兵制の復活まで試みたくらいである。

翻って、日本でもグローバル化に伴い外国人が増えている。地方の人は知らないだろうが、東京では子育てをしている若いカップルが外国人であることも多い。財界人や商人の中には、目先の金儲けのためだけに移民を入れようとしている連中もいる。昨今、闇雲に多様性やグローバル化を称讃する風潮が広まっており、日本の伝統やアイデンティティーが失われるのではないかと危惧する。多様性は国際都市や多国籍企業、大学などでは大切だが、地域社会においては、対立を生み出す元凶にもある。民族や伝統文化を守るためには単一性も必要だ。我が国がフランスの二の舞にならないことを祈るばかりである。