最小回転半径その2(バイクの場合)

前に四輪の回転半径について調べました。

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ついでにバイクのケースも解析しておくと面白いかもしれません。バイクの場合もバイクを真っ直ぐに立てている時は4輪と同じですが、バンクさせることで回転半径を短くすることができます。YouTubeで白バイが狭い道でUターンする様子を見ることができます。回転半径はバイクの場合もホイールベースと前輪の切角で決まりますが、前輪の角度は車軸を路面に射影して計算していいと思います。バイクを傾けることで、前輪の切角はハンドルの切角より大きくなります。以下この方針で計算します。

図の様にバイクをx軸の上に置いて、前輪の中心を原点に合わせます。ハンドルの切角を\theta、バイクの傾きを\phiとします。バイクの傾きはバイクをx軸周りに\phiだけ回転させるのと同じことです。さて、バンク角がゼロのとき前輪の車軸の上にある点Pを考える。バイクを傾けるとPは\phiだけ回転してP'にいく。これをxy平面に射影したものをP''とする。y軸からP''までの角度を\alphaとおいてこれを求めるという問題です。

原点からPまでの長さを1として計算すると、P''の座標は(sin\theta,cos\theta cos\phi)、原点とP''の距離をピタゴラスの定理で求めてsin\alphaを計算すると

\begin{equation}sin\alpha=\frac{sin\theta}{\sqrt{sin^{2}\theta+cos^{2}\theta cos^{2}\phi}}\end{equation}

\alpha\geq\thetaは式に頼らずとも図から明らかです。バンク角\phiがゼロのときはcos0=1sin^{2}\theta+cos^{2}\theta=1なので、当然\alpha=\thetaとなります。ホイールベースをLとすると、回転半径はR=L/sin\alphaなので

\begin{equation}R=\frac{L\sqrt{sin^{2}\theta+cos^{2}\theta cos^{2}\phi}}{sin\theta}\end{equation}

となります。

 

では教習車で有名なCB400SFで計算してみましょう。

カタログ値によりますとCB400SFのホイールベースはL=1.41m、最小回転半径は2.6mだそうです。ここからハンドルの最大切角\thetaは約33度であることがわかります。いま仮にバンク角\phiを30度としましょう。三角関数の近似表を使って計算すると、だいたい

\begin{equation}\sqrt{sin^{2}\theta+cos^{2}\theta cos^{2}\phi}=\sqrt{(0.54)^{2}+(0.84)^{2}\frac{3}{4}}=0.84\end{equation}

となりますので、これを上の式に代入すれば、近似で

\begin{equation}R=\frac{1.41\times 0.84}{0.54}=2.2\end{equation}

を得ます。つまり30度バンクさせたときの最小回転半径は2.2mというわけです。元の2.6から40cm短くなりました。これは半径ですから、道幅でいうと80cmくらい余裕ができたことになりますね。